コラム

NIPT(新型出生前検査)の原理と特徴について 

2025.09.16

NIPT(新型出生前検査)とは

NIPTは、ここ数年で日本でも行われるようになってきた出生前検査のひとつです。 
実はお母さんの血液の中には、ほんの少しですが赤ちゃんや胎盤由来のDNAの断片が混ざり込んでいます。 
このDNAを調べることで、赤ちゃんの染色体に変化がある可能性を推測する検査です。 

検査時期 妊娠10週~ 
費用(当院) 11万円(検査費10万円+遺伝カウンセリング5千円×2回分) 
※カウンセリングを必須としているのは、検査を受ける前後の不安や悩みを一緒に整理し、今後の方針を納得して考えていただくためです。 
検査対象疾患 日本の認証施設では主に次の3つの染色体疾患を対象としています。 
・21トリソミー(ダウン症候群) 
・18トリソミー(エドワーズ症候群)
・ 13トリソミー(パトウ症候群) 

NIPTの結果は3パターン

NIPTの結果は「確率」ではなく、基本的に 陽性・陰性・判定保留 のいずれかで返ってきます。 

・陽性…対象となる染色体疾患の可能性が高いと判断されます。  
   対応:必ず羊水検査などの確定診断で確認します。結果が陽性=確定ではありません。 

・陰性…対象の染色体疾患の可能性が低いと考えられます。 
   対応:多くの場合は追加検査の必要はありませんが、100%除外できるわけではありません。妊婦健診や超音波でのフォローが大切です。 

・判定保留(判定不能)…陽性か陰性か判断できないという結果です。0.3-0.4%の頻度で起こるとされています。 
           対応:再度採血を行うことが多いですが、羊水検査などを検討する場合もあります。 

NIPTは一般的に感度が高く、見逃しが少ないと報告されています

  • 21トリソミー(ダウン症候群):約99%以上 
  • 18トリソミー(エドワーズ症候群):約97〜99% 
  • 13トリソミー(パトウ症候群):約90-95%  文献1より 

例えば21トリソミーの赤ちゃんが100人いた場合、そのうち99人以上を見つけられる、というイメージです。ただし、どちらも100%ではないため、陽性が出た場合は羊水検査などで確認が必要になります。 

NIPTの陽性的中率について

  • 21トリソミー(ダウン症候群) :約85-95%(注) 
  • 18トリソミー(エドワーズ症候群) :約50-80% 
  • 13トリソミー(パトウ症候群) :約71-80%  文献2より 

NIPTで陽性と出た場合、多くは確定診断でも陽性が確認されると報告されています。報告によると、NIPTで羊水検査に進む割合は約0.1〜1%程度とされています(文献3)。 

注:陽性的中率は母集団によって変動します。 

ごくまれにお母さんの体の染色体の変化などが検出されることがあります 
NIPTは本来赤ちゃんの染色体の状態を調べるための検査ですが、ごくまれにお母さん自身の染色体の変化や体の状態が結果に反映されることがあります。例えば、母体側の染色体の変化や、まれに悪性腫瘍の存在が示唆されることが知られています。こうした場合には、赤ちゃんだけでなくお母さんの健康確認が必要になることがあります。異常が疑われたときには、専門の医師と連携しながら追加検査や経過観察を行っていきます。 

まとめ

・検査は妊娠10週以降から採血で受けられる 
・感度・特異度は高く、特に21トリソミーでは感度99%以上と報告されている 
・ごくまれに母体の染色体変化や悪性腫瘍などが示唆されることがある 
・あくまで「可能性」を調べる検査であるため、陽性の場合は必ず羊水検査などで確認が必要 
・陰性でもごくまれに見逃しがあるため、定期健診や超音波でのフォローが大切 
・検査の結果をどう受け止めるかはご夫婦で考える必要があり、カウンセリングが重要 

最後に

NIPTは赤ちゃんの健康状態についての「手がかり」を与えてくれる検査です。 
けれども、その結果をどう受け止め、どう活かすかはご夫婦によって異なります。 

「受けた方が不安が減らせるかな?」 
「もし陽性が出たらどうしたらいいんだろう…」 

そんな気持ちを一人で抱え込む必要はありません。 
私たちは遺伝カウンセリングを通じて、医学的な情報だけでなく、ご夫婦の思いや不安に寄り添いながら、一緒に考えていきます。 

1.Gil MM, Accurti V, Santacruz B, Plana MN, Nicolaides KH. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2022;59(1):74-84. doi:10.1002/uog.23664. 

2.Dar P, Jacobsson B, MacPherson C, et al. Am J Obstet Gynecol. 2022;226(5):B2-B13. doi:10.1016/j.ajog.2022.01.019. 

3.Japanese Association of Medical Sciences (JAMS). NIPT(新型出生前検査)について. 日本出生前診断学会 Webサイト. https://jams-prenatal.jp/testing/nipt/. Published 2024. Accessed September 11, 2025.